「自分には何ができるだろう?」と自問したら、みなさんはいくつ自分の強みが出てきますか?
古川さんは、自分の強みを増やすために、負荷がかかる環境を選択しながらチャレンジを繰り返し、仕事で活かせる強みを増やしてきたそうです。
どういう軸で負荷がかかる環境を選択し、苦労もあるなか、逃げずに仕事と向き合ってきたのか。今後の目標やライフステージと仕事との考え方も含めてインタビューさせていただきました。

2011年、新卒で株式会社明光ネットワークジャパン入社。新規事業の立上げに携わり、その後より経営に近い考えに触れたいと、2014年に株式会社ビズリーチ入社。その後より営業力をつけたいと考え、2016年にジブラルタ生命保険株式会社へ。2017年にはベンチャー企業の株式会社Finatextへ入社。(現在は株式会社スマートプラスに出向)
株式会社Finatext(https://www.finatext.com/ja/jp)
Finatextは、次世代ウェルス・マネジメント・サービスを提供すること目指し設立された会社です。リテール向けにモバイルサービスや投資関連のアルゴリズム等を提供するFinatextと、機関投資家向けにビッグデータ解析サービスを提供する Nowcast(2016年8月統合)、次世代証券プラットフォームの確立と、個人投資家のそれぞれのライフシーンで投資が可能なモバイル端末をメインとした証券会社スマートプラス(2017年3月設立)の3社を軸に、国内外(台湾、マレーシア、ベトナム、イギリス)で事業を展開しています。
株式会社スマートプラス(https://smartplus-sec.com)
スマートプラスは『”証券”の再発明で、投資に自由を』をミッションに持ち、次世代証券ビジネスプラットフォームを提供する証券会社です。コミュニティ型株取引アプリ「STREAM」を展開中。
自分に負荷をかけ続けるキャリア選択。その原点は「ひとりでも生き抜く力」をつけたいという思い
–新卒で入社してすぐ新規事業の立上げだったのですね。どういった思いで新規事業に手を挙げたのですか?
古川さん:将来、ひとりで何かをやっていけるくらいの力をつけたいという思いが強かったです。どんな事業をするかなどの詳細は漠然としていましたが、その夢を叶えるためには、自分に負荷をかける環境でキャリアを積まなければいけない。自分の100%ではなく、120%を出し続けることが1番成長につながる、と考えました。
はじめてのキャリアを明光ネットワークジャパンに決めたのは、「経営」に触れてみたかったから。塾の運営ができるというのが決め手でした。
新卒研修が終わって配属を決めるタイミングで、役員に対して「新規事業をやりたい」という気持ちをぶつけました。
今思うと、大胆な発言をしたものだと恥ずかしさもありますが、早く「経営」について学び、同期とは違う道を選択していきたいと考えていた私には、新規事業を提案することは必然だったのかもしれません。
事業は、学童保育と塾が一体となった新しい学童保育の運営。一緒に事業を運営するメンバーを募り、常務に直接提案をしたところ、そのまま事業をスタートすることが決まりました。
でも、周りからは「新卒が新規事業なんて無理だろう」という意見があったのも事実です。悔しいですが、そう思われるのも当たり前。4月に新卒として入社してから、たった2ヶ月の間にここまで到達しましたが、まだ仕事で実績も信頼もない私に企業が事業を託すなんて、先輩方は心配になるのも無理はありませんでした。
入社して2ヶ月目の新規事業をスタートすることが決まったときは、「絶対に成功させて恩返しをしていきたい」と決意した瞬間でもありました。
–実際に新規事業に着手して、どんな日々を過ごしましたか?
古川さん:いざ事業をスタートしてみて感じたことは、もどかしさでした。事業はゆっくりと着実に伸びていきましたが、大企業にとってはわずかな貢献でしかありませんでした。また私自身の顧客思考が強くて、ビジネスとしてものごとを捉えきれずに苦しんだ日々でした。
会社の戦力になりきれず、同期のメンバーが既存事業でどんどん好成績を出して称えられる姿を横目に、当初想像していた姿とはかけ離れた現実に直面して、消化しきれない悔しさでいっぱいだったことを覚えています。
–苦しさ・悔しさの中で、どう仕事に向き合い続けたのですか?
古川さん:新規事業をやりたいと言い出したのは私自身。でも、自分が言い出したことが事業として実現出来ているにも関わらず、なぜもどかしさを感じているのか……を自問し続けました。
結果、新規事業という「同期と違う選択をした私」を認めてもらいという承認欲求の強さと、「新規事業をやっている目的=経営を学ぶということ」をうまくつなげて考えることが出来ていなかったからだと気づきました。
例えば、事業をゼロからはじめるということは、更地からスタートするも同然。アイデアを出すこと、発言すること、PDCAを高速で回すことなど、新しいものを生み出す難しさを身にしみて経験したこと自体が財産である、と思ったんです。
無駄な経験なんて1つもないと気付いてから、その経験が私に自信を持たせてくれました。
この時期、もどかしい中でも、実は嬉しい経験を何度か味わっています。
学童に入りたての小学校1年生の男の子がいました。なかなか周囲に溶け込めずに心配していましたが、ある日「古川先生がいたから、この学童にずっといられたんだよ」と言葉をかけてくれたこと。
ときには、保護者の方から「古川さんのために買ってきました」と差し入れをして下さったこと。
今思い出しても、嬉しさで涙が溢れるような経験も味わうことができました。
学童保育の事業をはじめて3年が経過するころには、学童の定員はいっぱいになり、事業として順調に育っていました。
–その経験から、また新しいチャレンジを選択したのですね。
古川さん:そうですね!3年目が終わったとき、「もっと事業スピードが早い、IT業界でチャレンジしてみたい」と、キャリアの考えに変化がありました。
大きな企業で新規事業を託していただけたことに感謝していましたし、自分で提案し、育ててきた事業を託すことへの後ろめたさもありました。一方で、もっともっと経営をスピード感ある環境で学んでいきたいという気持ちが強くなるのを感じていました。
悩みに悩んだ結果、機会を逃して後悔はしたくないと思い、次のステージに飛び込む決断をしたんです。背中を押して下さった当時の上司の方々には、今でも感謝の気持ちしかありません。
次の職場では、半年間の営業を経験したのち、はじめてのカスタマーセンターの立ち上げと新規サービスの開発に携りました。
どちらも会社としてはチャレンジングな内容だったので、ここでもワクワクする気持ちが止まりませんでした。
ですが、チャレンジには苦労はつきもの。
ですが、自分に負荷がかかる経験を積みたくて選択した転職。どうせやるなら全力で取り組まないと意味がないと思い、思うがままに行動しました。
そんな新しい業務にチャレンジした甲斐あり、人を巻き込みながら組織を活性化させるリーダーシップ、顧客視点をもってメンバーが業務に取り組むためのカスタマーファーストの視点など、前職の新規事業では経験できない力を養うことができました。
自分らしく働くために「自分の人生の中でどういう意味をもつのか」を常に自問
古川さん:実は私、新しい事業をやりながら、デザインを学ぶために学校にも通っていたんです。自分で全てをできるようになりたい、と思ったので好奇心のおもむくままにデザインを学ぶための専門学校に通いました。(笑) さらに、会社のメンバーにお願いをして、週に1回デザインについて教えてもらう時間をつくりました。
新しい業務でいっぱいいっぱいになりつつも、「どうせやるならひとりでも出来るようになっておきたい」「もっと学びたい」という好奇心が、いつも私を突き動かすんです。
はじめて尽くしの経験をした2年を終えたタイミングで、ふと「私に足りていないのは営業力。いつかひとりで事業をしていくとしたら、もっと営業を経験しておかないと」と思うようになりました。
–再び自分自身に負荷をかけるキャリアを選ばれたんですね。
古川さん:はい、「営業力を鍛えたい」と思って、職場として選択した会社がジブラルタ生命保険でした。
入社して半年間は本当に大変でしたが、半年を超えたときに一気にブレイクスルーしたんです。そのとき、新しい気づきを与えてれたのは、ジブラルタ生命保険で長く活躍する女性と出会いでした。
そのころから、ギャップ分析を習慣として取り入れていて、今でもなにかモヤモヤするときには、自分の現実と理想を紙に書き出しながら整理するようにしています。
as is(現在の姿)と to be(理想の姿)のギャップを把握し、その差を埋めるために具体的に何をするかなどを考えるフレームワークのこと。
毎日忙しすぎると、目の前の仕事に追われてしまって、現在の仕事に携わる意味を忘れてしまいがちなんですよね。
ですので、意識的・習慣的に自己分析を実施することで、仕事に対しても、「自分の人生の中でどういう意味をもつのか」を常に自問し、モヤモヤを解消できるように心がけています。
こうして、「やりたいこと」「そのために必要なこと」がすぐに口に出せるくらいクリアになり、自信をもって目の前の仕事に取り組むことができるようになりました。
やりたいことは口にする。そうすると誰かの脳内検索に引っかかって実現するきっかけに。
–自分が求めるものに向かって、さまざまなキャリアを選択されてきた古川さんですが、希望を実現する秘訣はなんだったのでしょうか。
古川さん:実現したいことや希望は言葉にして伝えることだと思っています。
つい最近も、予期しないところから縁がつながり、実現のきっかけをつかめた経験がありました。
実は、ジブラルタ生命保険で保険の提案を重ねる中で、保険などの資産運用だけでお客様の人生をサポートするには限界があるな、と感じていたんです。
そもそも、日本では貯蓄だけで生涯設計を考える方が多いですが、欧米では専門のファイナンスコンサルタントが個人について、貯金だけではなく投資や保険などを含めて、生涯設計をすることが当たり前です。
「日本のお金に対するネガティブなスタンダードを、どうにか変えていきたい」と考えるようになり、現職のFinatextを紹介してくれたのが、野澤さんです。
野澤さんのLife Career Interviewはこちら
世の金融スタンダードへ挑戦したい、新しいキャリアを描きたい、そう言葉にして伝えたことで、希望を実現することができました。
現在は、広報、コミュニケーションマネージャー、人事、マーケティングと4足のわらじを履きながら仕事をしています。
ひとりで4役こなすことは大変ですが、その分今まできなかったことができるようになると思うと、「ひとりでも生き抜く力」をつけるというキャリアの目標に対して、大きく前進していると感じています。
同世代の女性へ
–同世代の働く女性へ、ぜひメッセージをお願いします!
古川さん:自分が自分らしく、描きたいと思ったキャリアを見失わないでほしいです。
ライフイベントがあったとしても、小さなことであっても、自分が実現したいと思ったことを実現できるように、いろいろな挑戦をしてほしいなと思っています。
もし、キャリアで悩んでいる方がいれば、「なぜ悩んでいるのか」にしっかりと向き合って、ぜひas is(現在の姿)と to be(理想の姿)を考えてみてほしいです。
以前、プロノバという会社を経営する岡島悦子さんの講演に参加したとき「タグの掛け算」という概念を知りました。
自分にできることを書き出して、それを自分を表す”タグ”として考えるんです。
例えば、”新規営業”や”スピードレスポンス”、”新規事業立上げ”など、こうした”タグ”を増やしていければ、それぞれをかけ合わせることで、自分自身の市場価値を高めることができます。
私の場合、スタートアップベンチャーの現在の仕事は、今までになかった新しい経験値・スキルを”タグづけ”する、絶好の機会ですね。
「私らしく、一人でも生き抜く力をつける」という目標の実現のためには、仕事場以外のプライベートも、新しい”タグ”を手に入れる機会だと思っています。
最後に
今回は、新卒から新規事業に携わり、30歳の現在までに4回のキャリア選択している、力強い女性のインタビューでした。
目の前の仕事に追われている毎日だと、やらなければいけないことだけに埋めつくされて、「自分がやりたいことが出来ていない」と思ってしまうこともありますよね。
そんな方は、ぜひ古川さんのように、自分が今向き合っている目の前の仕事が、自分にとってどういう意味をもっているのかを考えてみて下さい。そして、その仕事を通して得られる”タグ”を探してみましょう。
いったん立ち止まって、自分の人生における現在地をいろいろな角度から見て、今の自分自身ができることを見つける時間を作ってみてもいいかもしれませんね。