ふわキャリ

Life Career Interview 06|好きなことを突きつめてみる。キャリアは後からついてくるから。

今回は、リノべるで広報を担当している田尻有賀里さんにインタビューをさせていただきました。

旬なベンチャー企業でキャリアを積んでいらっしゃいますが、もともとキャリア志向ではなかったという田尻さん。そんな田尻さんが、仕事を通して得意なことや好きなことを見つけたことで、今では勉強会やパネルディスカッションで登壇するまでに。

目標や夢が見つからなくて悩んでいる方にこそ読んでいただきたい、キャリアのつくり方をご紹介します。

田尻有賀里(たじり ゆかり)さん| リノべる株式会社 社長室広報

立命館大学を卒業後、化粧品会社での web 兼 PR 担当を経て、2007 年 4 月にグリー株式会社に入社、5 年間企業広報からイベントの運営、社内広報まで幅広い広報業務 に従事、東証マザーズ、東証一部と株式上場を経験。マガシーク株式会社経営企画室での広報担当を経て、2015 年 7 月、リノベる株式会社入社、社長室広報 担当。 PRSJ 認定 PR プランナー 日本パブリックリレーションズ協会、日本広報学会所属。

リノべる株式会社(https://www.renoveru.jp)
リノベるは中古マンションのリノベーションに必要な物件情報、設計・施工、専用ローンなどをワンストップで提供する会社です。不動産会社、設計者、施工会社等、お客様のニーズに合った住まいづくりのプロを独自の高度専門化ネットワーク網からマッチングし、全国各地のショールームで物件探しからお引渡し後に至るまでお客様の住まいづくりをサポートします。

キャリア志向ではなかったからこそ、来るものを拒まずに何でもやってみた

ーー就職氷河期の時代。なかなか企業が選べない中どんな意思決定をされたのですか?

田尻さん:私が就職活動をした2004年は就職氷河期。内定を頂いた企業に入るといった状況で、今のように選べる時代ではありませんでした。私は内定を1社いただいていましたが、気持ちが乗らず就職活動を継続していました。

そのとき出会ったのが、ファッションウォーカーやガールズウォーカーといったファッションのECサイトを立ち上げ、東京ガールズコレクションで一世を風靡したゼイヴェルという会社です。当時、携帯でものを売ることは画期的だった時代でした。

ゼイヴェルが運営していたファッションのECサイトから届いたメルマガにモニター募集と書かれていました。マスコミ志望だったこと、ユーザーだったことから商品の発信をするモニター募集だと思って興味本位で応募。とんとん拍子に話が進んでいき、通過した後に中途採用だったことを知ったんです。

インターネットメディアは当時yahoo!くらいしかなくて、雑誌に掲載されたファッションがインターネット上で買えるシステムに将来性も感じたので、飛び込んでみました。

ーー中途採用の方と一緒に入社した新卒時代。どんな日々を過ごされていたのですか?

田尻さん:入社1年目から、一番売上を出していたファッションのECサイトをつくる部署に配属をされ、携帯サイトでファッションを販売するすべての工程を担当しました。バイヤーが洋服を買い付ける以外はすべて担当していたため、モデル撮影、画像加工、携帯サイトの立ち上げ、売上管理に至るまで責任をもっていました。

一見、仕事に前のめりな新卒のエピソードに思われるかもしれませんが、キャリアを積みたいとか、5年後・10年後にこうなっていたいとか、仕事における夢や目標は描けていませんでした。特に決まった夢や目標が描けていなかったから、ベンチャーという未知の世界に飛び込めたのかもしれません。

今のベンチャーは当時に比べると恵まれているので、ある程度就業環境が整っていると思いますが、当時のベンチャーは何も整っていないことが当たり前。研修で教えてもらえる環境はなく、とりあえず自分でやってみるというスタンスで、毎日手探りで仕事を進めることに戸惑っていました。

ーー戸惑いの日々に、辞めたいと思ったことはなかったのですか?

田尻さん:2年目になったタイミングで役員に辞めたいことは伝えていましたが、「せっかく縁があって一緒に働いているんだから、もう少し頑張ってみないか」とアドバイスをいただき、グループ会社で化粧品のPRとWEBのディレクションの仕事を任せていただくことになったんです。

PRの仕事ははじめてだったので手探りでしたが、メディアキャラバンのやり方やプレスリリースの書き方まで自分で調べながら進めていきました。

グループ会社は10名程度の社員しかいないため、ある程度自由があって、自分のやってみたいようにチャレンジすることができました。グループ会社で経験した2年間のおかげで仕事の面白みに気づき、PRの仕事をもっと深堀したいという欲求が生まれたんです。

この2年間のPRは、「商品を掲載してどれだけ購買につながったのか」というマーケティングに近い仕事。でも、もっと経営に関わるPRの仕事をキャリアとして積み上げていきたいと考えはじめたときに、企業広報の存在を知り、チャレンジするためにはじめての転職を決めました。

旬なスタートアップは山あり谷ありの繰り返し。でもそれが特別なキャリアにしてくれた

ーーはじめての転職。再びスタートアップを選択されたようですが、どんな日々を過ごされたんですか?

田尻さん:企業広報に絞って転職活動をはじめましたが、当時、第二新卒を企業広報として採用する企業はなかなかなくって。でも、旬なベンチャー企業は企業広報を採用していたこともあり、いろいろなベンチャー企業の選考を受ける中で、一番ベンチャー企業らしいスピード感を感じたグリーに入社を決めました。

この転職では、ゼイヴェルはTGC運営で有名になったタイミングだったので、その旬な企業で商品PRを経験していたことをプラスに評価してもらいました。旬な企業に入って仕事を経験することはキャリアにおいて糧になると思います。

とはいっても、前職で企業広報としてキャリアを積んできたわけではなかったので、日々の仕事を通して「企業広報とは」を学ぶ毎日。やってきたボールをすべて打ち返す気持ちでがむしゃらに仕事をしていましたね。

在籍中にグリーは上場しました。上場前の広報業務では、広告収入やユーザーの獲得、採用活動において働きかけをおこなっていましたが、上場後は株主に対して広報活動をおこなうため、企業広報といっても対応する内容がまったく異なりました。このどちらも経験できたことは広報として強みになったと思います。

入社当時は従業員30名でしたが、退職をするころには2000名にまで成長したんです。会社が成長する過程を企業広報として間近で経験できたことが財産ですね。

多くの場合は、会社があって、仕事があるという不自由ない環境で仕事をすると思います。なにも整っていないある意味カオスな環境から企業が成長する過程では、会社の事業が変化すると自分の仕事も変化します。そんな変化する環境に身を置いたことが特別なキャリアになると感じています。

ーー順調なキャリアのなかで、つまづいたこと、失敗したことはどんなことですか?

田尻さん:新卒時代から自分で何とか仕事を覚えてきた経験ばかりなので、数え切れないほど失敗はしているんです。でも、心がけていたことは、振ってもらった仕事は120%で返すことキャリアがないからこそ強みを作りたいという気持ちが強かったんだと思います。

この仕事はしたい・したくないと判断をしていてはどこに自分の強みがあるのかもわかりませんが、なんでも受け入れて、受け入れた仕事を全力でやっていると、自分の得意分野が見つかったり、仕事のコツもわかるようになりましたね

広報の仕事でお話をすると、マスコミの方に対するアウトプットの質の高さは、社内の人脈やメンバーとのグリップ力など社内コミュニケーションの質で左右されます。

マスコミの方が求めている情報に対して、適切な情報を社内のリソースをつかって提供する必要があります。求めてられている情報とこちらが提供する情報のマッチング精度が高いほど企業の露出も増えます。まさに広報の腕の見せ所。

マッチングの精度が高まれば、「この分野については田尻さんに聞いてみよう」とマスコミの方から認識していただけます。そんな関係が築けるように、日頃から社内のキーパーソンとコミュニケーションをとり、情報を集めるようにしていました。

また、広報の立場として掲載したいメディアがある場合、社内のメンバーに取材の協力をお願いする必要があります。協力していただくにあたって、最初は乗り気でなかったとしても、掲載したい目的やアテンドした理由、掲載されたことによる影響度について、丁寧にロジックを組み立てて理解をしてもらうように心がけました。

特に、実際に掲載された結果をフィードバックすることは徹底。社内メンバーに気持ちよく協力してもらうための手間は惜しみませんでしたし、結果を社内に共有することでメンバー自身にフォーカスがあたるような演出もしました。

ーー企業広報としてキャリアを積み上げていても、このタイミングでも夢や目標はなかったのですか?

田尻さん:グリーでちょうど5年が経とうとしたとき、私は30歳になる直前。東証一部上場もして、仕事がしやすい環境になり居心地もよかったんです。

でも、この仕事を続けていくのか、ポジションを上げていくのか、新しい仕事にチャレンジするのか、フリーランスになるのかといった今後のキャリアや、結婚についても考えるようになっていて。

広報を続けていきたいとは思いつつも、今の仕事の質で他社でも通用するのか、今までの経験は価値があるのか考えたとき、一般的に通用する自分でありたいなと思うようになり、自分で自分の人生を歩んでいく力をつけたいと思って転職することに。

こういうとキャリア志向になっていたと思われるかもしれませんが、この時期もキャリア志向が高かったわけではなく、「好きなことで仕事をやっていきたい」ということだけが譲れないポイントでした。

私は○○キャリだからと決めつけず、好きなことを仕事にする

ーー一般的に通用する広報になるための転職。どんな日々を送られたのですか?

田尻さん:グリーから転職して入社をしたのがマガシークです。マガシークで企業広報を立ち上げを3年経験しましたが、グリーで培った企業広報のノウハウを応用することができたと思っています。

グリー時代の企業広報は、やってきたものをすべて打ち返すような仕事の仕方をしていましたが、マガシークではその経験を踏まえて戦略的に企業広報として動くことができたので、応用ができたことが自信になりました。

この時期から、セミナーで登壇したり、勉強会に呼ばれることが増えたのですが、広報は結果が出るまでに時間がかかることもあって、すぐに評価をされるものでもありません。そのため8年広報を経験していましたが、知見がついてきたと私自身は思うけれどキャリアに自信があったわけではなかったんです。

たまたま、外部からお声がけいただいた勉強会で広報についてお話をしたところ、それをきかっけにいろいろなセミナーでの登壇や勉強会のお声がけをいただくようになりました。

仕事を通してノウハウをアウトプットする機会に恵まれ、自分自身がこれまでやってきたことにやっと自信が持てるようになりました。

ーー目標や夢を探しても見つからずに悩む女性は多いですが、どんな方法で探すといいのですか?

田尻さん:多くの女性がバリバリ働いていかなければならない、キャリアを積み重ねていかなければならない、目標がない私なんてダメだと思いがちですよね。

でも、キャリア志向や目標がなくても、仕事を通じて好きなことや得意なことを見つけて突き詰めていくだけでキャリアは築けると信じてほしいです。

「1万時間の法則」という言葉があるように、どんな分野でも1万時間続けていけばその分野が自分の強みになっています。それが仕事だとあっという間に1万時間過ぎてしまうんです。

1日5時間働いたとしたら5.5年後に到達します。実際は休日など仕事をしていない日ももあるのでもう少しかかるとみて6~7年程度だとします。私の広報のキャリアも、グリー5年、マガシーク3年の合計8年間を広報として仕事をしていたら、この分野の知見ができていて、得意な仕事になっていきました。

もしキャリアに悩んでいる女性へアドバイスするとしたら、「好きなことを見つけて、見つけたらとことん突き詰めていったら、キャリアはあとからついてくる」ということを伝えたいですね。

目標からの逆算でキャリアを積み上げる方法も賛成ですが、目標が持ちづらいなら、好きなことや目の前の仕事を通して探すこともできると思います。

ある程度の方向性は決めても、ガッチリとは固めないことがポイントです。そうすると、心がスッと軽くなって、好きな仕事を見つけやすくなります。

もしやりたいことがあった場合は周りの人に伝えることも忘れずに。言葉にして伝えると、機会があったときに自分のことを思い出してもらえるので一気にチャンスがやってきますよ。

たとえ、自分が思い描いていた仕事でなくても、あえてその仕事を任せようとしている、道しるべのようなアドバイスをいただけることもあります。

ーー結婚するタイミングで、3回目の転職をされたんですよね?

田尻さん:当時つきあっていた彼氏がシンガポールへ赴任することになり、結婚するはこびとなりました。

同じころ、登壇したイベントでリノべるの山下社長と出会い、事業についてお話をうかがう機会があったんです。衣食住という人の生活を支えるインフラを扱っていることもあって、社会的意義が大きい事業だと実感しましたのを覚えています。

リノべるのビジネスは、「家=新築=高価なもの」という日本人の固定概念に対して、リノベーションという選択肢を増やすことで、より自由な住まい選びができる世の中を実現しようとしていました。新築の約3分の2の価格で住宅を購入できるビジネスモデルなので、多くの人の生活を変えることができる事業です。とても魅力を感じました。

フリーランスで広報の仕事をしても、与えられる影響範囲は限られます。

リノべるであれば、企業広報を通して社会的価値のある仕事も従事できるんじゃないか、と感じて転職することにしたんです。

今、ちょうど入社して3年目をむかえるところですが、新築信仰が強い日本社会にリンベーションを選択する層が増えてきたと思います。

いままでリノベーションを選択肢にする方は、お洒落な方かこだわりが強い方が多かったのですが、現在は一般の方々が住居を考えるときにも、新築か賃貸かリノベーションの3択になってきています。こうした時代の変化を感じながら、社会に新しい価値を提供できていることが嬉しいですね。

ーー今は目標や夢はできたのですか?

今後は、社内社外問わず広報の仕事をする人材の育成に力を入れていきたいと思って、草の根活動をおこなっているところです。渋谷で働いている同世代の広報同士による情報交換会や広報経験が浅い方に向けての相談会もしています。

今は「広報の仕事をずっとやっていきたい」と思えるようになってきて、5年・10年後もこの仕事を通して目標を描いていきたいと思っています

ここまでたどり着くのにかなり時間がかかりましたが、やっと目標ができたことが嬉しいですね。

繰り返しになりますが、私のようにキャリア志向がはじめからない女性や夢や目標が見つからずに悩んでいる女性が読んでいらしゃるとしたら、まずは振られた仕事をなんでも受け止め全力で取り組んでほしいです。

そして、仕事を通して好きなことを探し、突きつめていってほしいです。そのうち、自分の好きなことが必ず見つかって、キャリアはあとからついてきますから

最後に

いかがでしたでしょうか。

一見キャリア志向が強そうな田尻さんですが、もともとは目標も夢もなかったという事実に驚きました。

でも、キャリア志向が強くなかったからこそ、どんな仕事でも選り好みしないで取り組めたでしょうし、キャリアがない分、強みを見つけるためのコツを見つけたのではないでしょうか。

よく目標は逆算するといったアドバイスを受けることが多く、無理にでも探そうとして疲弊している女性を多く目にしますが、田尻さんのような柔軟な考え方で、気持ちがスッと楽になって前向きにキャリアを積み上げていこうと思った女性は多いのではないでしょうか。

「努力は好きには勝てない」ように、好きを仕事にする女性が増えることを応援しています。