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Life Career Interview 08|どんな壁も、視座を変え行動を変えれば、変化を起こすことができる

今回のライフキャリアインタビューは、古谷聡美さんにお話をうかがいました。

新卒から6年近く外資系企業に勤務し、直近2年をフリーランスとして働いたのち、今年1月に起業。

やりたいことを実現したくても、自信やスキルがなくて一歩踏み出せずに悩んでいたとしたら、視座を変え、行動を変えることで現実へと一歩進めることができるコツをご紹介します。


古谷聡美(ふるや さとみ)さん | 株式会社Clarity 代表取締役CEO

2010年成城大学卒業後、外資系BPOコンサルティング会社にてコンサルタント、社長秘書を兼任。その後ビーコン・コミュニケーションズ株式会社に入社し、P&GやPhillip Morris等のグローバルブランドを担当。2016年からフリーランスとしてZehitomoなどのスタートアップに参画しながら、2018年1月に株式会社Clarityを設立。

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仕事は自分で生み出すもの

ーーどんな新卒時代を過ごされていたのですか?

古谷さん:大学3年生から1年間サンディエゴ州立大学に交換留学していました。帰国後に留学生向けの就活セミナーに参加したことがきっかけで、語学力は留学で身についたものの、グローバルなビジネススキルを身につけたくて、外資系企業への入社を目指すようになったんです。

そこで出会った、海外の企業が日本に進出する際の日本法人の立ち上げや、会計、人事、税務といったバックオフィスのアウトソーシング事業をおこなっている外資系BPOコンサルティング会社に入社して、コンサルタント兼社長秘書を2年間経験しました。

私が所属していた営業チームは全員外国籍だったこともあり、全員バイリンガルで英語が公用語。また、日系企業のような新人研修はなく、仕事の仕方は自分で学ぶしかない環境でした。

留学経験があったので英語への抵抗はありませんでしたが、社会人としてのビジネスマナーも仕事もできない状態。右も左もわからないまま自分で仕事を探し、少しずつ人の役に立つことで、次の仕事を任せてもらえるようになり、こうした日々の積み重ねから仕事を学んでいく毎日でした。

厳しい環境に身を置いたことで、自分から仕事を生み出すことや自分で考えて成果を出すこと、ビジネス英語をこの2年間で身につけることができました

でも、もっと自分の強みをつくりたい、ゼロからイチを生み出す仕事がしたいと思って、3年目に転職を決意したんです。

ーー転職を決意した背景には、どのようなご経験があったのですか?

古谷さん:もともとバックオフィスのアウトソーシング事業は、コスト削減のためにお客様の仕事をあえて外部の私たちに委託するため、お客様の社内において人員削減をおこなうことが多々ありました。

うまく成果を出したとしても、コスト削減というマイナスをゼロに近づけることが事業のミッション。

お客様の会社を健全に経営していくための仕事を任せていただいていることは意義のあることでしたが、ゼロからイチを生み出す仕事への憧れは、日に日に強くなっていました。

また、多くの外資系企業をお手伝いしながら、日本と欧米の文化の違いが経営や売上に大きく影響していたことを目の当たりにしました。

会計や人事といったバックオフィスにおいて、日本と海外の違いを伝えるブリッジングをしていましたが、文化やコミュニケーションのブリッジングがしたいと思うようになったんです。大赤字のファッションブランドの立て直しを任されて痛感したことが大きなきっかけでした。

だから、転職する条件に置いたのはゼロからイチをつくっていく仕事に携われること、そして日本と海外の文化やコミュニケーションの橋渡しができること、そして英語が公用語の職場であることでした。

それができるのは外資系広告代理店だとわかって、転職活動に踏み切りました。そして、転職活動当初から希望していた、外資系広告代理店会社のビーコン・コミュニケーションズから内定をいただくことができました。

その後、転職するまで間に数か月時間があったため、仕事をせずにゆっくり身体を休めても良かったのですが、ご縁があってGoogleの人事部で、エンジニアの新卒採用とインターンシッププログラムの仕事を短期でお手伝いをさせていただきました。

Googleでは当時からダイバーシティ&インクルージョンを掲げて、女性のエンジニアを増やすことや多様性人材へのチャンスを増やす取り組みをスタートしていました。

組織としてダイバーシティに取り組んでいる企業が少ないこともあって、仕事を通して興味がどんどん湧いていったのを覚えています。今振り返ると起業のきっかけになっているのは、ダイバーシティに興味を持つことができたGoogleでの仕事の経験があったからだと思っています。

ーー未経験の転職先ではどんな経験をされたんですか。

古谷さん:ビーコン・コミュニケーションズに入社して最初に担当したのがP&G。日本でも馴染みのあるSK-II、女性用品、ヘアケアの広告制作に携わりました。P&Gの広告担当として入社をしたこともあり、グローバルブランドの担当として思い切り仕事に振り切りました。

その後、Phillip Morrisのブランディング担当を任せていただきました。Marlboroではブランドキャンペーンの立ち上げ、新商品のパッケージデザイン、動画、ビジュアル、ウェブ、印刷物の制作。iQOSでは全国リリースのためのウェブとアプリを担当するなど、幅広い仕事を経験することができました。

約4年間在籍しましたが、時間のある限り仕事に集中し全力投球。仕事にのめり込んでいた分、仕事が楽しくて仕方ありませんでした

一方で、30歳という節目の歳に近づき、「30歳になったときに、自分の力で世の中にサービスを提供したり、事業を興したりするビジネスパーソンになっていたい」と考えるようになりました。ゼロからイチをつくりたい気持ちがもっと強くなっていったんです。

30歳って節目にしなくてもいいのに、節目として意識してしまいますよね(笑)。

漠然としたイメージを現実へと変えるために踏み出す一歩

ーー節目を意識した結果、どんな決断をされたのですか?

古谷さん:ビーコン・コミュニケーションズでは「4年間仕事をした」という充実感もあり、漠然としていた「事業を興す=起業する」というイメージを現実へと変えていくために、退職を決意し、起業の準備期間としてフリーランスに転身することにしたんです。

スタートアップで働いたり、投資家やメディアの方とリレーションを築いたり、イベントやミートアップに積極的に参加するなど、できることや必要だと思ったことを2年間フリーランスとして働きながら起業の土台をつくっていきました。

フリーランスで仕事をするということは、仕事上で何かがあった時、自分を守ってくれる誰かはいません。正直なところ、身一つで勝負することが怖かったですね。

でも、地道に仕事を続け、人脈を大切にするとひとりでもなんとか食べていけることがわかるようになりました。

だから、起業をしたら事業を成功させたいけれど、万が一上手くいかなくなったとしても、「自分と社員数名くらいは食べさせることができる」とだんだんと自信がもてるようになりました。

――これほどまでゼロイチで価値をつくる「起業」を意識するのは、何か強い想いがあったのですか

古谷さん:起業を志す背景には、父親が代々続く印刷会社を経営していたことがあるのですが、実は、私が中学生のときに経営が立ち行かなくなってしまったんです。

その時、専業主婦だった母親が「紙の時代は終わって、これからはWEBの時代だ」といって、いきなりWEBデザイン会社を設立しました。

私は幼い頃から「女の子は勉強をしなくてもいいから教養を身につけなさい」と教育を受けていて、幼稚園から高校まで女子高に通っていました。ある意味、結婚をゴールとしていたんです。

自分の家も友だちの家も、みな同じような価値観だったので、結婚することが女性の幸せにつながると思い込んでいました。

でも、会社が経営困難になると、自宅のビルが競売にかけられ、持っていた外車はカローラへ、宝石やブランド品も質屋へ出すことに。

そんな状況下で、両親はなんとか会社を経営しながら家事・育児を両立する生活となり、「父親は仕事、母親は家事」といった夫婦の役割分担に変化が起きます。

こうした経験もあって、自分自身の生き方を考えるようになりました。

仕事と家庭を縦割りにし、それに合わせて男性と女性の役割も縦割りになっている世の中が当たり前でしたが、女性が家庭以外に、経済活動へ貢献する機会が持てないことはリスクでしかないと思うようになったんです。

母親の働く姿を見ながら、女性でも自立し食べていけるようになれば、人生の選択肢が増えて、リスクも軽減されることがわかり、女性自身のエンパワメントを高めることが私の人生の目標になっていきました。

また、人生のどん底を経験していることも、ゼロイチで価値を生み出すことへの想いに繋がっていると思っています。

どん底のままだとただの「可哀そうな人生」ですが、マイナスをエネルギーに変えて、より良い社会を築くための一助になるべく価値提供していけば、辛い想いをしたことにも意味がある、と思ったんです。

だからこそ、ゼロからイチを生み出すことに価値があると信じ、自分の行動で世の中を変えていきたいという思いが強いんだと感じています。

どちらかではなくどちらも選択する掛け算思考で、相乗効果を生み出す

――決断をするときは、どんな考え方で決断をされるんですか?

古谷さん:正直緊張することは多いし、石橋を叩いて渡ることもあるし、悩むこともたくさんあります。仕事をしていると選択をしなくてはいけないことが多いですが、選択しなければいけないときこそ、大変な方を選ぶようにしています。

できれば失敗はしたくない。けれど、大変な方を選択すれば、自分への負荷は大きいですが、その負荷を乗り越えた先の成長が手に入ると思うんです。

壁があったら、「また成長できる機会が増えた!ラッキーだ!」と思うようにして、どんなに大変な状況も楽しむように心がけています。

また、やりたい仕事を探すとき、「アプリをつくりたい」「ファッションにかかわりたい」といった手法やプロセス軸で考えてしまうと、あらゆる選択肢が出てきて整理ができずに悩んでしまいます。

でも、「もっとこうしたら役に立つな」「こんなサービスがあったら喜ばれるな」とプロセスの先にあるゴールを考えるようにすると、ゴールを実現するためにやりたいことの選択肢や働き方が明確になるので、選択がしやすくなると思います。

最後にもうひとつ。

選択というと「どちらか一方」となりがちですが、「どちらも選択する」ことを意識しています。

実は、いざ「起業しよう」と決断したのと同時期に、お付き合いしている方と同棲の話があがり、加えて婦人科系疾患が進行するという事態がありました。

起業をしようと思った矢先のタイミングで、「選択」をしなければいけない状況になったんです。

同棲はせず、治療をしながら起業するか。起業は先延ばしにして同棲するか。治療だけに専念するか…。

「何を選べばいいのか…」と思いましたが、ひとつの選択をするために、他のことを諦めなければいけないことがあるとしたら、それが一番ストレスになると感じました。

例えば、治療のために起業を諦めたとしたら「あの時、疾患になったから起業ができなかった、遅れてしまった」という気持ちが残ってしまうと思って。

だから、すべてを選択しようと決めたんです。結果的に、起業もして、同棲もして、治療もして治しました。

治療には2週間の入院が必要で、最初は2週間も入院したらミーティングができないし事業が滞ってしまうのではと危惧しましたが、考え方を変えて「2週間個室に入院できるなら、資金調達に必要な財務資料をつくっていこう」と考えたんです。

その結果、治療を優先しながらも、集中して業務に取り組む時間も確保できたので、財務資料も完成し、スムーズに資金調達も完了しました。

マイナスとマイナスを掛け合わせてプラスに転換することができたんですよ。

だから、どちらかを選択しなければいけないときでも、どちらも選択する掛け算思考で相乗効果を生み出すことは可能だと思っています。サバイバル能力ですかね(笑)。

――これから目指すものは何ですか?

古谷さん:女性ひとりひとりが働きやすさを実現するために、必要なことを世の中に生み出していきたいです。

また、ひとりの人間として「自分が何を与えてもらえるかではなく、自分が何を与えることができるのかを考えて行動していける人であり続けたい」と思っています。

たとえば、相手にお時間をいただいたようなときは、この時間のなかで自分が何を提供できるのか、付加価値を感じてもらえるのかを考えて行動ができるような、自分軸ではなく相手軸で考えていきたいです。

自分の価値って、何を提供できて、何を生み出せるかだと思っています。

だから、自分の価値が自分のなかで留まるイメージはなくて、生み出して、提供して、相手がそれを価値だと思ってもらえるように仕事をし続けていきたいと考えています。

自分の理想的な女性像を目指すことよりも、世の中にどれだけの価値を提供できるかを目指すことが大事なのかもしれません。

編集部より

いかがでしたでしょうか。

先が見えない経験も、どちらかを選択しなければいけない状況であっても、視座を変え行動を変えることで人生を好転させることができることを教えてくださいました。

また、自分の在り方を考える以上に、世の中にどれだけの価値を提供できるかを考えていらっしゃる点も、ひと踏ん張りしたり、継続して頑張り続ける原動力になることも学ぶことができたのではないでしょうか。

今、仕事やプライベートにおいて苦労したり悩んでいることがあるとしたら、視座を変えて行動を起こすこと、また、相手にどれだけの価値を提供できるかを考えていくと、仕事においてもプライベートにおいても、変化を起こすことができるかもしれません。