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Life Career Interview 12|先を見据えてキャリアを描かなくても、いつか点と点がつながる時がくる

今回のライフキャリアインタビューは、高木麻美子さんにお話をうかがいました。

デザイナーになりたいという想いがありながらも、家庭環境、就職氷河期、リーマンショックなどによって何度も進路の変更を余儀なくされたことで、自分一人の計画通りにキャリアが進むわけではないーと身を以て経験。

チャンスがやって来るのを待ちながら努力を続け、タイミングを逃さずにアクションを起こし、テーマパーク運営企業のデザイナー職に。

先を見据えたキャリアに縛られすぎず、今の仕事を大事にしながらライフプランを合わせていくことの必要性を教えてくださいました。

明確なキャリアプランを描けなくて悩んでいる方や、自分の武器を持ってキャリアを積みたい方、そしてデザイナーとしてのキャリアを考えている方は、ぜひチェックしてみてください!

高木 麻美子さん

法政大学在学中に就職氷河期を経験。販売員としてキャリアをスタート。以前からの夢であったデザイナーになるために専門学校へ入学し、卒業後日産自動車へ入社。自動車のモデラ―のスキルを身につけたのちに、多摩美術大学に入学しデザインを専攻。ベンチャー企業勤務やフリーランスとしても幅広い業務を経験し、現職へ。

キャリアアップはタイミング。チャンスが来たらつかみ取るために準備を欠かさない

ーファーストキャリアはどんなスタートだったのですか?

高木さん:私の世代は就職氷河期だったので、大企業の内定は狭き門で厳しくって。

でも「まずは就職しなきゃ」と思って、契約社員として着物の販売員の仕事に就いたことがファーストキャリアでした。

でも本当は、「もっとクリエイティブな仕事がしたい」と思っていたんですよ。

父が婦人靴メーカーのダイアナでデザイナーをしていたこともあって、特に女性向けのデザインの仕事に憧れる気持ちが強かったです。

大学も美術大学に進学したかったのですが、父が亡くなり断念しなければならず、法政大学に進学。

就職しても、いつか自分で稼いだお金で本格的に美術を学び、デザインの仕事がしたいとずっと思い続けていました。

そんな時、自動車業界の3D化への取り組みとして、デジタルモデラ―育成のための専門学校ができたことを知りました。

その生徒募集情報をタウンワークで見つけて。(笑)

ものづくりを勉強できる!自分がやりたいデザインの仕事に少しでも近づける!と思ったら心が踊ってしまって、すぐに入校の申し込みをしました。

学校は3ヶ月間という短期間でしたが、朝から晩まで勉強で、卒業するときには運よく日産自動車のデジタルモデラ―として採用してもらえたんです。

当時、教室には30名ほどの生徒がいて、そのうち10名ほど採用者がいたのですが、その中で設計部門ではなく開発部門での採用は1名だけという狭き門でした。自分が将来的にデザインを学びたいという思いを伝えて、採用していただくことができました。学生時代から想い描いていたものづくりの仕事に携わるチャンスが巡り巡ってやってきたことがすごく嬉しかったです。

ー会社員として働くことを辞めて、専門学校に通うという決断に迷いはなかったのですか?

高木さん:大学を出て就職する前からずっと、デザイナーの仕事に挑戦するチャンスを狙っていたんです。

一度は販売員になったものの、美術を学びたいという想いはずっとあって、会社員を辞めて学校に通う決断に躊躇することはありませんでした。

日産自動車入社後は、デジタルモデラ―の仕事を通してスカイラインなどの開発に携わりました。でも、ますます「デザイナーになりたい」という気持ちが強くなり、2年経ったころに、貯めたお金で本格的に美術大学に進学をする決断をしたんです。

日産自動車という大企業で働くチャンスを得られたことはとても大きな経験だったと思っています。しかし、デジタルモデラーという仕事を長期的に続けられないのではないかという危機感もありましたし、一緒に働いていたデザイナーの仕事を近くで見られたことも刺激になって、本格的にデザインを学ぶ意思が固まり、この時の決断も迷うことはなかったです。

ー美術大学での学生生活は、会社員では経験できないこともありましたか?

高木さん:はい。学生生活といっても、昼はデザイン事務所で働きながら多摩美術大学の夜間部に通っていたんです。働ける時間が限られているのにも関わらず、幸いにも日産での経験を買っていただいてデザイン事務所に採用して頂きました。そこでは主にダイワ精工の釣具を始めとした工業デザインをしておりました。

25歳で入学してから29歳までの4年間、職場でも大学でも、みっちりデザインを勉強できたことは、本当によかったと思っています。

学生として学びながらも、社会人として「どうしたらビジネスの中で自分の技量を活かせるのか?」ということを考えてデザインをしていたので、自分の卒業制作を商品化してもらえないか、と、キングジムやコクヨを始め、様々な企業に売り込みに行ったこともありました。

残念ながら商品化には至りませんでしたが、自分で弁理士を立てて特許申請をして、自ら企業にアポをとってプレゼンするなど、いかにも学生らしい熱意のある行動というか。(笑) 会社員としてはなかなかできない経験をさせていただいたと思っています。

美術大学を卒業するときには、人生2度目の就職活動をするのですが、なんとリーマンショックで。(笑)ここでも就職氷河期に直面することになったんです。

卒業制作の売り込み時に、いつの間にか人脈が増えて、仕事を紹介してもらえることもあったので、2度目の就職活動では無理に就職することなく、フリーランスとしてしばらく仕事をする決断をしました。

将来のキャリアを描いて入念な準備をしていても、外部環境によって道筋が変化してしまうこともあります。時流を見て、時には柔軟に自分のキャリアを変化させることも大切だと思います。

デザイナーはアイディアマンではなく、問題解決能力のあるカウンセラー

ーずっと気になっているのですが、デザインや商品のアイディアはどのように考えるものなのですか?パッと浮かんだりするのですか?

高木さん:そうですね、デザインは訓練だと大学で習いました。「 いかに選択肢を考えられるか」ということでもあります。

例えば、「ペットボトルで何ができるか?」ひたすらアイディアを出していく授業がありました。

「花瓶にできる」「コップにできる」とか、いろいろ考えられますよね。

次は「半分に切ったらどうか?」「穴を開けたらどうか?」とか選択肢を増やしていくんです。そうすると漏斗として使えるとか、調味料入れに使えるとか。形状を変えた場合の用途と可能性を考えていくんです。

コツは「細かく細かく分解していくこと」。

デザインを考える工程は、一見すると突発的にアイディアが浮かんでいると思いがちですが、「穴を開けたら」「紐を通したら」と、こうしたらああしたらと仮説を立てていく過程は、ロジカルシンキングであり、限られた時間の中でいかに選択肢をみつけることができるか、ということなんです。

ーデザインはロジカルなんですね!高木さんが思うデザイナーはどういう仕事ですか?

高木さん矛盾した意見をいかに融合させるかが、デザイナーの腕の見せどころであり、デザインの力だと思っています。

例えば、とある会社の商品企画で、起案者は商品のターゲットを女性に設定しているとします。一方で会社側としては、売上を担保するためにも男性にも売れるような商品にしたいという思いがあります。

一見、矛盾するようなのですが、相反する方向性のギャップを埋めて、双方の願いを叶えながらも、よりよいビジュアルやプロダクトを提案していくことが、デザイナーの役割だと思うんです。ターゲットはあくまで女性としながらも、男性にも手にとってもらえるようなソリューションをデザインで提案していくこと。

「そんなのできるわけない!」をかなえるのがデザイナーの仕事ですし、やりがいなのかもしれませんね。

また、デザイナーはカウンセラーでもあると思っています。

商品を企画する時、メンバーから「どういう商品を求めているのか」「どんな悩みを抱えているのか」「どんな課題を解決したいのか」をしっかりヒアリングして、「こういうものをつくりませんか?」と提案することを心がけています。

さまざまな角度から課題を捉えてデザインにしていくのですが、その答えはひとつではありません。

多くの選択肢を生み出し、課題解決ができる最適なソリューションをデザインで導くことがデザイナーの仕事だと思っています。

経験がつながり出会えた、念願のデザイナー職

ー美術大学を卒業して、フリーランスを経験された後のキャリアは、どのように描いたのですか?

高木さん:フリーランスの経験を土台にして、念願だった女性向けの商品を開発、販売するベンチャー企業に就職することにしました。

開発はもちろん、チラシやweb広告、通販雑誌に載せる絵づくりなど、広報やプロモーションに近い仕事も多かったです。 また展示会のプロデュースをしたり、新しい化粧品ブランドを立ち上げる時には、ターゲット設定を含めたブランディング全般を任せてもらったりもしました。

大企業の一角で狭く細く深く、決められた仕事に携わるのとは異なり、この時就職したベンチャー企業では、製品の開発から販売に至るまで、幅広いバリューチェーンでの業務を経験できたと思っています。

ただ、会社の意向もあり、開発よりも販売に重点を置くようになり、徐々に広報の仕事が大部分になってしまいました。例えば一日中スタジオで写真撮影をするとか。せっかく美術大学で学んだプロダクトデザインのスキルを活かしたいと思っていた時に出会ったのが現職の商品開発職でした。

ー誰もが憧れる会社のデザイナーとして入社を決めたのは、どんな背景からだったのですか?

高木さん:現職には、これまでの経験を通して培った自分の強みを活かせるフィールドがあるな、と感じました。

当時は、社内にキャラクターグッズのデザインに携わったことがある同業種のデザイナーが多かったようなのですが、3Dモデルがトレンドになり、プロダクトの現場を知っているデザイナーが求められていたんです。

私の強みは、男性向け・女性向け、平面・立体と、この4象限において幅広くデザインできることなのですが、これはさまざまなプロダクトの開発設計や商品企画、プロモーションに携わってきた経験があったから。

振り返れば、これまでジャンル問わず幅広いデザイン開発経験をしてきたことが、他のデザイナーとの差別化につながる強みになったのかもしれません。

期待されていることと、自分のスキルがマッチした職場に出会えたことは、本当にうれしく思っています。

未知なる将来を考え過ぎて悩むよりは、”今”を大切にして、チャンスを待ってみる

ーこれまでのキャリア振り返ってみて、思うことはありますか?

高木さん:「キャリアプランは戦略だ」と言われることがありますが、私はもっと柔軟にキャリアを考えています。ほとんど偶然によってできているという感じかも。

2度の就職氷河期など、時代の流れに左右されて、思った通りのキャリアが描けないことが多かったので…。

だからこそ、外部環境や社会がどういう動きをしているのかを捉え、そこに自分のモチベーションやライフイベント、キャリアプランをマッチさせていけるよう舵取りをすることが大切なのではないかと思うんです。

そんなことを考えていたら、先日参加したセミナーでスタンフォード大学の先生が「キャリアプランの8割は偶発性である」と、同じようなことを言っていました。(笑)

思い描いたライフキャリアでなかったとしても、やりたいこと、挑戦したいことを忘れずにいれば、”今”の経験は、いつの日か必ずつながると思います。

もし今のキャリアに悩んでいる人がいれば、未知なる将来を考え過ぎて悩むよりは、を大切にして、チャンスを待ってみるという選択もおすすめしたいです。

編集部より

いかがでしたでしょうか。

ライフキャリアインタビューでは初めての、デザイナー職の高木さんへの取材でした。

時代に翻弄され逆境とも思われる環境でも、自分のやりたいこと・挑戦したいことを強く想い、一歩一歩前進されていくキャリアストーリーがとても素敵ですね。

高木さんの語られるデザイナーという仕事についても、「デザイン」というカテゴリの業務だけではなく、事象の課題解決をゴールとし、そのためのソリューションを生み出す思考をする点は、他の職種に置き換えても同じことが言えるのではないかと思います。

編集部メンバーにとっても、たくさん学ばせていただいたインタビューでした!