女性のキャリア

Life Career Interview 14|会計士『連結の女王』が感じたキャリアへの危機感。自分を信じて今にとことん向き合う経験を

今回のライフキャリアインタビューは、公認会計士でもあり、株式会社ラウレア代表取締役の飯塚 幸子さんにお話をうかがいました。

公認会計士と聞くと、資格取得試験のハードルが高く、資格取得後もハードワークなので男性が多いという実態があるかもしれません。また、将来を通してどんなキャリアを積んでいくのか、具体的にイメージできる方が少ないかもしれません。

そのような中でも女性で、今では『連結の女王』と呼ばれるくらい、連結会計一筋でキャリアを歩まれてきた飯塚さん。お話をお聞きすると決して公認会計士として一般的にイメージされるようなバリバリなキャリアのタイプではないとのことです。

現在自身のスキルにモヤモヤされている方、自立して働きたいと考えている方にぜひ読んでいただきたいインタビューです。

飯塚 幸子(いいづか さちこ)さん | 株式会社ラウレア 代表取締役

大学卒業後、新卒で化学メーカーに入社。入社後すぐに公認会計士を目指す。公認会計士合格後、資格スクール、監査法人、連結会計システム会社で勤務。現在は、株式会社ラウレアの代表であり『連結の女王』として事業を推進する立場として活躍中。

「危機感」をパワーに資格取得へ

 
ーー公認会計士を目指したきっかけは何でしたか?

飯塚さん:大学で専攻していた分野が化学だったので、学んできたことを活かすために化学メーカーの技術職になるつもりで、大学卒業後は大手化学メーカーに入社したんです。

でも、研究所採用だと思っていたら、配属されたのは人事部で。

これはあとから教えてもらったんですけど、本当は技術職採用だったようなのですが、たまたま私が入社した年度は技術職採用の人数が多くて、本社でもうまく立ち回れる人材はいないかとなり、私が選ばれたそうです。(笑)

人事部では主に採用を担当していましたが、たまたま人事部に配属になった私には正直少し仕事に物足りなさを感じていました。ちょっと暇だったんですね。(笑)

入社して1年たつ前に、「自分自身に何もスキルなどが身についていない」「これはまずい!」と思いはじめました。

もともと技術職志望だったこともあり、専門的な知識やスキルを持てていないことに危機感を感じましたし、でもいまさら理系職種でやり直せるほど勉強もしてないという状況でした。

この時、思いついたのが資格取得だったんです。

社会人1年目の年末に、資格を取ろうと本屋で資格の本を探して、1月に公認会計士が良いかなと思い、3月には公認会計士の資格を取得することを決めました。4月には勉強をスタート。

社会人2年目の4月に勉強をスタートしたのですが、実は事前に公認会計士の勉強がそんなに難しいって知らなかったんです。スタート時は「これで資格取得できたら会社辞めようかな」くらいの軽い感じでした。

ーー公認会計士の資格取得は結構ハードですよね…勉強は大変でしたか?

飯塚さん:勉強をスタートしてみたらすごく難しいことに気づいて、毎日勉強時間を確保するために、フレックス制度を活用し、早朝出勤・早く帰宅することにしました。

自分なりに、仕事と資格取得の勉強を両立できるように工夫していたのですが、2ヵ月後くらいに上司から話があって、働き方を元に戻して欲しいと言われてしまいました。

制度はあれど、まだ実態が追いついていない時代だったからかもしれませんね。笑

それでも、資格取得は諦めたくない気持ちが強く、勉強を優先させるために、退職することを決意しました。

会社を辞めてしまったので、生活のために日中はアルバイト、夜と土日をフルで勉強するという生活にシフトチェンジ。

思い切った決断だったなと自分でも思うのですが、資格取得をしようと思ってから、勉強スタートするまでの行動が早かったので、余計な情報に左右されず、「やり切るしかない」と思えたことも、この決断を後押ししたんだと思います。

資格取得の勉強をはじめた時、友達や上司に少し話をしたのですが、「無理だと思うよ」とみんなに言われました。みんな公認会計士でもないのに(笑)

実は、その時にはもう資格取得の専門学校には申し込でしまっていて。無理だと言われても「こっちが無理!」という状況でした。

だからこそ、「やらなければいけない」と思いましたし、専門学校に通っていても、気持ちが揺さぶられてしまうような余計な情報は自分に入らないようにしていました。

友達もつくらず、周りの情報が気にならないように一切シャットダウンして、避けるように勉強をしていたのを覚えています。

ーーそれでも勉強を続けられた要因は何だったのですか? 

飯塚さん:最後まで自分自身を信じていたことでしょうか。というか、私にはそれしができなかったのかも(笑)。

通っていた専門学校の講師に言われたことだけをひたすら実施し、今日のテスト、今日の講義に関してだけを徹底的に復習するという1年でした。

予習はしないので、答案(いわゆる模擬試験)では点数がとれない状況からスタート。

だた、新しく学んだことを徹底的に復習していたので、過去の答案に出た内容については次に同じような問題が出ればできるという自信がつきました。我慢する日々が続きましたが、集中できたことが私の成功要因だったかもしれません。

試験合格直後に合格体験談でも話した内容なのですが、答練の点数もずっと点数は悪かったんです。毎回得点上位者から張り出されるのですが、いつも何枚めくっても自分の名前が出てこない状況で。

後々、自分が通っていた専門学校の講師になったのですが、何人かの受講生に「飯塚先生はなんであんなに成績が悪かったのに受かったんですか?」と、単刀直入な質問もあったほどです(笑)。

何かに心底向き合った経験があれば、仕事にも良い出会いが生まれる

ーー合格後のキャリアとしては、どういう選択をされたのですか?

飯塚さん:公認会計士の資格試験合格後は監査法人で働くというのが一般的なキャリアパスかもしれませんが、私は、自分が通っていた資格専門学校の講師になりました。

監査法人で経験を積むキャリアも検討して、採用の窓口に書類を送ったのですが、書類選考で落ちてしまって。

それと、正直なところ、試験後に本格的な就職活動する気持ちになれなかったんですよ。

試験後は、合格発表までに3ヶ月くらいあります。その3ヶ月間で就職活動をしなければいけないのですが、自分では「できなかった」という印象が強くて。

もちろんできていた科目もあったのですが、得意な科目で大失敗したんです。その衝撃が大きすぎて、就職活動に対するモチベーションをあげることができませんでした。

もし資格試験に落ちたら勉強をまた再開しなければならないため、お金もかかる…。そうしているうちに通っていた専門学校で、バイト募集をみつけたので、試験後にバイトをはじめました。

試験には無事合格したのですが、キャリアとしては、そのまま講師として正社員で働くことになりました。

ーー専門学校では、どんな働き方をされたのですか?

飯塚さん:実は、とてもハードな毎日になったんです。

資格専門学校で講師として働きはじめた矢先に、監査法人で再募集があって。その監査法人からは、専門学校の講師を対象に非常勤での募集があり、専門学校講師と監査法人の仕事に並行して従事する日々がスタートしました。

朝と夜は資格専門学校で講師、日中は監査法人で監査業務という毎日です。講師は土日もあったので、一時期においては休みがないくらい働きました。

当時としてはめずらしい、ダブルワーカーですね。(笑)

この時、監査法人での業務で「連結監査」というものに出会ったんです。

当時は大企業や上場企業であっても、単体決算が中心の時代でした。連結決算は、システム化も進んでおらず、私が担当した企業はまだ巻物のような紙で実施してました。

そんな時代から「連結監査」に関わっているので、お蔭様で基礎の基礎から学び、経験を積むことができました。

この時の経験が今に活きていると思うと、若いうちは少し無理をしてでも、いろいろな仕事に幅広く携わることも大切だと思います。

 

ーー経験が積めるとはいえ、ダブルワークはハードそうですよね…どのくらい続けられたんですか?

飯塚さん:ダブルワークでの仕事は、6年間ほど続けました。

でも20代後半にさしかかった時に、一度講師も監査法人も辞める決断をしたんです。

このままの働き方を続けるのは体力的にも厳しいと思ったのですが、正直なところ、「こんなにずっとバリバリ働き続けてるけど、いったい私、何のために働いてるんだろう」と虚無感を感じてしまって(笑)。

それで一度辞めて、お手伝い程度に働くスタイルに切り替えて、日中はスポーツクラブに通うなど、生活を180度変えてみたんです。

先々のことを考えながら、少し気持ち的にも余裕を持てたころに、専門学校の講師職に戻ることにしました。

ーーバリバリ仕事をしてきたからこそ、20代後半は悩みますよね…。そこから何か転期はあったのですか?

飯塚さん:そうですね、ある時、外資のコンサルティング会社で連結会計の専門部隊が立ち上がるとのことで、「連結会計」の講師として教えにいく機会があったんです。

講師としての働きを評価いただいたことをきっかけに、そのままコンサルティング会社へ転職することになったんですよ。

その会社では、大手企業の顧客に対して、連結決算のシステム導入も含めたコンサルテーション業務に携わるのですが、ここでもまた新しい仕事との出会いがありました。

パートナー企業として連結決算システムを提供していたのが株式会社ディーバという会社なのですが、システム導入プロジェクトでお世話になることがあって。

今度はそのままディーバへ転職。

ここでも、連結会計システムの導入コンサルテーションをメインで実施し、会計システムの導入を決めてくれた企業へ、しっかりと活用いただけるよう説明にお伺いしたり、顧客データをシステムへ反映させたりする仕事に従事しました。

専門学校の講師から再発進した第2のキャリアでしたが、気づけばまた目まぐるしく働く日常に。

しかし、その中でも、ハワイや沖縄にひとりで旅行にいったり、友達と趣味のフリーダイビングを楽しむ余裕はつくれたかなと思っています。

思いきって起業、そして「連結の女王」へ

ーー出会いがつなげてきたキャリアパスのなかで、なぜ起業することにしたのですか?

飯塚さん:ディーバには12年間お世話になったのですが、組織内においてある程度やりきった感を感じていました。

ただ、これまでのキャリアでコアスキルになっていた「連結会計」を活かそうと考えたら、ディーバのライバル会社で働くくらいしか選択肢がなかったんですけど、さすがにそれはしようとは思わなくて。

その時、まだ独身だったということもあり、一度自分でやれるだけやってみようと思い立ったのが起業です。

もしうまくいかなかったら「実家に帰ろう」と覚悟を決めて、起業しました。

――起業してよかったことはありますか?

飯塚さん:仕事をいただいて、一所懸命取り組むとまた次の仕事をお願いされるというシンプルな評価がうれしいです。

気持ち的にもイキイキ働けている理由としては、そこが一番大きいかもしれません。

組織で働いていると、正直たまに評価に納得いかないこともあったんですよね。なんで評価に納得感がないのかなと考えたときに、なぜこの人が評価者なのかなどと余計なことを考えてしまいがち。評価者が顧客だということはすごく納得感が高いです。

現在は「連結の女王」として、セミナーを開催したり、お悩みの相談をいただいたりすることもあるのですが、そういった場でも評価してもらえていることが嬉しいですね。

自分の仕事に対する評価に納得感が一番高いことが、イキイキ働く秘訣かもしれないです。

ーー雇われる立場から、雇う立場へ。起業して何か変わったことはありますか?

飯塚さん:変わったことはたくさんありますよ(笑)。

まず、収入は半分くらいになりました。友人からは「なんでそこまでして起業するの?」と言われましたね。

でも、働き方は自由になりました

独立したてのころは資金も少なく、カフェや貸し会議室で、アルバイトのメンバーと2名で仕事をしていました。

最近のカフェは、個室もあるし、電源も使えるので本当に便利ですよね。

あと、公認会計士として独立後に、結婚もしました。結婚に関しては、もう半ば諦め気味だったんですけど(笑)、ご縁があって大学の同窓会で出会った方と結婚することになりました。

お互い働いていて、自立しているのでとても良い関係だと思っています。

お客様から直接、個人として評価されることがやりがいに

――一度入社した会社を辞めてでも、公認会計士の資格取得してよかったことはありますか?

飯塚さん:公認会計士という資格がある時点で、組織の中のひとりというより、個人として見られる、評価されているという感覚があります。

「資格保持者としての個人」が評価されるという側面があるので、仕事ができるようになれば、それだけ自分に自信がついていく仕事なのかもしれないですね。

また、さまざまな企業の方とお話ができるというのも魅力です。いろいろな経験をされた方々とお話ができるし、ポジションが上の方とも会う機会が多いので、個人としても本当に勉強になります。

――今後のライフキャリアビジョンとしては、何を描かれていますか?

飯塚さん:これだけ連結会計にずっと関わってくると、「この分野で何か残していかなければ」という責任感があります。

今までも行き当たりばったりのような状況で、具体的に先々のことまで考えていなかったのですが、まず、今私たちが提供しているサービスにおいて、できるだけ私がいなくても顧客に価値を提供できる仕組みを考えたいと思ってます。

長年、連結会計の分野に携わってきているので、この分野に従事する方全員が、少しでも楽になればいいなという気持ちで取り組んでいきたいです。

今は連結会計の分野でもシステムを利用している企業が増えてきていますが、最近は人手不足でアウトソーシングの依頼が多くなってきました。

人手不足を人手でカバーするビジネスモデルは近い将来には限界をむかえると思っています。

そこを自動化しマンパワーを削減していくという、時代に合わせた取り組みをしていきたいですね。

編集部から

いかがでしたでしょうか。

仕事に集中した時期はあるものの、決してバリキャリ志向ではなく、目の前のことに注力した結果、自分らしいキャリアを歩んでいらっしゃることがうかがえます。

資格取得の勉強も、公認会計士としての連結会計業務も、周りに流されずに自分の信じた道を突き進むことで、ひとつひとつの壁を越えてこられた飯塚さん。

人生の壁はひとそれぞれ違うかもしれませんが、まずは自分を信じて動くことが自分らしいキャリアを歩むコツかもしれません。

また思った以上に、公認会計士のキャリアは多岐にわたることを知れました。

もし自分のスキルに不安があったら、ぜひ一歩踏み出してみましょう!

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