大学卒業とともに公認会計士試験に合格し、EY新日本有限責任監査法人(以下、EY新日本監査法人)にて10年以上のキャリアを積んでこられた和田益知さんにインタビューをさせていただきました。

資格を活かした仕事の醍醐味は、専門性のあるスキルを身につけることだけでなく、監査法人で勤務しつづけたり、独立したりできるなどキャリアの選択肢が広く、かつ働き方の自由度が高い上に、経済的にも自立することができます。

専門性のある資格を取得して仕事をしたい方や、キャリアの選択肢を広げたい方にとって参考になるインタビューです。

和田 益知さん | EY新日本監査法人 マネージャー 公認会計士

2008年立命館大学卒業後、新日本監査法人(現EY新日本監査法人)に入所。入所以来、監査部門にて、監査業務に従事。自動車グループ(製造、販売)、IT関連企業等を経験し、現在は、広告代理店、IPO準備会社等をメインで担当。

会計士を目指したのは、ライフイベント後も仕事を続けやすい職業につきたかったから

ーー会計士を目指されたきっかけを教えてください!

和田さん:実家が自営業だった影響もあり、仕事をするとしたら経営に携わることがしたいと思っていました。

ただ経営者である父の仕事を間近で見るなかで、私自身、発想力や創造力といった経営者に必要な能力にはあまり自信がもてなくて。

そう感じたのは高校生の時でしたが、それであれば、事務方で経営を支えられるような存在になりたいと思い、公認会計士の職業を知ったことが私のキャリアのはじまりです。

両親は共働きで、私がこどものころから働いている姿を見ていたので、私も長く働き続けられる職業につき、ライフイベント後も仕事に邁進できるように資格を活かして仕事をしたいという考えもあって、会計士という仕事はしっくりきたんです。

実際に職業本を読んで調べてみると、文系の最高峰の資格が弁護士や会計士だということがわかりました。

経済的にも比較的ステータスが高い職業で、目指すならとことん「上」を目指したいという思いから、本格的に会計士を将来の仕事として考えるようになりました。

大学を選択するときも、経営学や会計学が学べるかどうかを軸にしていましたし、在学中の公認会計士試験合格を目指し、専門学校とダブルスクールをしていました。

結果的に、大学を卒業した2008年に会計士の資格をとることができたのです。

ただ、合格までの道のりは決して順調ではなく、大学3年生で受けた1回目の試験では、端にも棒にもかからないほどの結果でした。

「大学卒業までに会計士に合格する」と目標を掲げても、大学生ということもあってどうしても遊びを優先してしまって。

でも、自分自身を崖っぷちの状態におき、「資格取得を目指すからには就活はしない」と覚悟を決めたことで、心を入れ替えて、ひたすら専門学校にいって勉強したんです。

それまでは専門学校に友だちはいませんでしたが、毎日勉強しに行くようになると自然と友だちができて。同じ目標をもつ同志の存在は大きくて、「お互い協力しながら絶対に資格取得しよう」という意気込みに変わって、毎日の勉強でも続けることができました。

ーー会計士試験合格者としてEY新日本監査法人に入社してからは、どんなお仕事をご経験されたのですか?

和田さん:入社した当初は、自動車グループに配属され、自動車メーカー、自動車の部品メーカー、ディーラーなどのお客様をメインに担当し、監査業務をおこないました。

順調にキャリアを積んで社会人4年目になった時、上場企業の現場責任者である主査の仕事を経験させてもらって、その後1回目の産休に入りました。

実は、ライフプランに関しては、学生時代からかなり具体的なプランを立てていて、当時思い描いていたのは、24歳の時には第1子を出産する計画でした。

でも会計士を目指すのであれば、試験合格後、修了考査に3年の期間が必要です。

この修了考査に受からなければ公認会計士として名乗ることができないので、当初のライフプランを変更し、修了考査合格後に出産する計画にしました。

1度目の復職時、産休前に所属していたグループに戻る選択肢が一番自然だったのですが、自動車関連業界のお客様の担当をするとなると、お客様の拠点が日本全国にあるため、高頻度な出張が予想され、仕事と育児を両立できるかが不安でした。

また、入社以来ずっと自動車関連グループで仕事をしていたこともあり、別の業界の会計監査にも携わってみたいという気持ちも大きかったんです。

上司に相談したところ、都内の会社を監査する業務を担当させてもらうこととなり、新しいグループで復職しました。

自分のキャリアに対する意見に耳を傾けてくれる上司がいて、受け入れてもらえる環境があったことには、本当に感謝しています。

1回目の復職はバランスを重視。2回目の復職時には仕事でチャンレジすることを決意

ーー復職をされてから仕事の仕方や考え方に変化はありましたか?

和田さん:以前と同じように会計監査の仕事に携わったのですが、復職した際の経験が私のキャリアにおけるターニングポイントになりました。

産休前は現場責任者として仕事をしていましたが、復職後は時短勤務を選択したこともあって、仕事と育児のバランスがとれるように、業務量や責任範囲を加味して、入社2〜3年目に経験するくらいの仕事、いわゆるスタッフ業務からはじめることになりました。

担当する業界が違うとはいえ、すでに経験してきた仕事内容だったので、復職してすぐに仕事に慣れることができましたし、復職後の数か月は「この働き方もいいな」と感じていたんです。

でも、だんだんと、責任範囲の大きい仕事を任せてもらっていたころの自分のことを思い出しては、モヤモヤとした気持ちがふくらんできて。

できる範囲での業務を繰り返すだけでは、何かに挑戦していくようなワクワク感を感じることができなかったんです。

一方で、復職して1年後には第2子を授かり、再び産休に入ることになりました。

第2子の出産は希望しており、うれしかったのですが、キャリアに関してはモヤモヤとした気持ちを抱えながら産休に入ったため、同期と比べてしまうことが何度もありました。

会計士は専門性の高いプロフェッショナルな職業だと思うのですが、それでも育児と両立するために短い時間しか仕事ができないとなると、周りの会計士のスキルについていけなくなってしまうのではないかという漠然な焦りを感じていたんです。

振り返ってみれば、第2子の産休時は29歳で、まだまだ仕事を通して輝いていたいという気持ちも大きくて、現状と理想のギャップに心苦しさや不安でいっぱいだったんですね。

ただ、こうした自分のリアルな気持ちに気づいたことで、2度目の復職時には、時短勤務を希望したとしても、仕事と育児のバランスがとれることだけを軸に仕事を選択することはやめよう、と心に決めました。

ーー実際に、2度目の復職の際にはどんな選択をされたのですか?

和田さん:産休前のグループに復職する予定だったのですが、急遽他のチームで人手が不足しているということで、産休前とは別のチームへ配属されることになりました。

当時は、時短勤務とはいえ、責任ある仕事を任せてもらいたいという思いが強く、正直なところ、新しいチームで自分の気持ちを理解してもらえるのかとても不安でした。

しかし、「現場では、もう少し責任のある立場で仕事がしたい」という想いを新しい上司に伝えたところ「そんな気持ちで頑張ってくれるのはうれしいから、ぜひお願いしたい」と言ってくださって。私個人と組織のニーズがマッチして、復職後すぐに上場企業のお客様を担当させていただくことになり、なおかつ現場責任者である主査の補佐を任せてもらえたのです。

そして、第2子の復職後は「やりたいと言ってくれるなら任せるよ」というスタンスで接してもらえるようになって、少しずつ上場企業の子会社やIPOを目指す企業の会計監査を担当できるようになりました。

1度目の復職で感じたキャリアへの不安感から、「もっとこうしたい」という想いを素直に伝えてみて、実際に望んでいた責任あるポジションにチャレンジする機会を得ることができました。

不安に思うだけではなくて、ちゃんとその気持ちの根っこを理解し、払拭するために行動していくことが大切だなと思う経験でした。

ーー実際に働き方を変えてみてどうですか?

和田さん:大変ですが、私の性格に合ってるのかなと感じています。

負担にならない範囲で仕事を続け、もっと育児のために時間を使いたいと考える方もいると思いますが、私はどちらも忙しいくらいがちょうどよく、イキイキできるんだな、とどちらも経験してみたからこそわかりました。

今一生懸命できていることが、日々の満足感につながっているんです。

将来のライフプランを考えることが好きで、監査法人で勤めるなら、こどもを出産してからもプロフェッショナルとして成長する、またゆくゆく会計士として独立するなど、キャリアについても昔からプランを描いていました。

ただ、実際には描いていたキャリアプランから大きく変わっているんですよ(笑)

ここまで育児が大変だということを想像していなくて、経験してみないとわからないんだな、というのが正直なところです。

資格の取得は復職しやすいだけでなく、働き方を選択できる自由度もある

ーー資格を有していることには、どんなメリットがあると感じていらっしゃいますか?

和田さん:資格の勉強をしていた時は、「資格があれば復職しやすい」「雇ってもらいやすい」といった程度しか考えていませんでした。

しかし、最近、監査法人勤務以外の女性会計士の方々とお話しする機会も多く、私と同じように育児をしながら独立されたり、一般事業会社の組織内会計士等、会計士といってもいろいろな選択肢があることがわかりました。

最近は、働き方を自分で選択できる点で、非常に大きな自由度があることを実感しているところです。

それに、会計士という資格は強みになりますし、経済的にも自立しやすいと思っています。

ーー今後、和田さんが考えるキャリアビジョンについて教えてください!

和田さん:実は、昨年昇進についての希望を聞かれました。

だた、昇進するとこれまでと比べて格段に忙しくなることはもちろん、何よりこどもが精神的に落ち着いていなかったこともあって、任せてもらった責任を果たしきれず監査法人を辞めざるを得ない状況になることが不安だったので、今は希望しないと返答したんです。

でも、内心、半分は挑戦してみたかったという気持ちもあって。

こどもが3歳と5歳になり、やっと落ち着いてきたこともありますが、今は挑戦的な選択をしたいと思う気持ちも強くなり、今年は昇進にチャレンジしてみようと考えているところです。

ライフイベントがあると、今までは何事も断らないような性格でも足踏みしてしまうことがあるんですね。

今となっては足踏みした経験があったからこそ、チャンスがきたらすべて打ち返した方が私にはあっているのかなと実感しています。

編集部より

いかがでしたでしょうか。

ライフイベントを経験しても仕事をつづけることができる職業を選択したいと思ったことがきっかけで会計士を目指した和田さんにお話をうかがいました。

専門的な知識を活かして仕事をすることができることはもちろんですが、1回目の復職では仕事と育児のバランスを優先したり、2回目の復職ではもっと仕事で高みを目指したい自分に気づいてチャレンジすることを優先したりと、専門性だけでなく、働き方の選択ができたのも会計士という強みがあるからこそ実現できたのではないかと思います。

自分に強みをつくっていくことはキャリアを考えるひとつのポイントであることを教えていただけるインタビューでした。