年々増加している、共働き世帯。
しかし、一方で「専業主婦になりたい」と考えている女性も4割います。
「今の時代は共働きがいい」と考える方も、「専業主婦がいい」と考えている方も、将来を見越して家族にとって最適な選択をしたいですよね。
今回は「共働き主婦」と「専業主婦」の場合で、それぞれ「収入」「支出」「税金」「年金」「出産給付金」「家事・育児」において、何がどの程度違うのか調べてみます!
ぜひご参考ください。
働き方次第で生涯年収に大きな差ができる
「専業主婦は2億円損をしている」という話が話題になりましたね。
大卒の女性が正社員として60歳まで働くと、平均的な収入の合計は約2億円といわれています。
正社員、派遣、パートなど収入を得る方法は異なりますが、結婚、出産を機に仕事を辞めて、家事や育児に専念するということは、その2億円分を稼げなくなることを意味しています。
生涯世帯年収に大きな差
労働政策研究・研修機構が発表する「ユースフル労働統計2017」の調査によると、大学を卒業し60歳で退職するまで正社員として働き続けた場合の女性(共働き主婦が正社員として働いた場合)の生涯賃金は、約2億2000万円とのことです。
専業主婦は会社勤めによる収入がなく、共働き主婦が得る生涯年収と比較しても非常に大きな差であることがわかります。
さらに、共働き主婦(正社員)と専業主婦の将来の年金支給額について比較してみると、ここにも大きな差がありました。
項目 | 共働き主婦 | 専業主婦 |
生涯年収 | 2億2000万円 | 0円 |
年金受給金額 | 184万2000円(年間) | 77万9000円(年間) |
(※)共働き世帯主婦の月給は38万円として年金受給金額を算出
現役時代に納めていた税金が異なるため、年金受給金額においては年間で約110万円の差になります。
老後に必要なお金は年々増えているという話もありますので、こうしてみると、共働き世帯が増加している理由も納得できますね。
共働き主婦と専業主婦、それぞれのメリット
生涯年収を比較してみると、共働き主婦のメリットが大きいのは明らかでした。
生涯年収以外の項目についても、共働き主婦と専業主婦のそれぞれのメリットをまとめてみます。
項目 | 共働き主婦 | 専業主婦 |
収入 |
収入源が増え、世帯年収は2人分。 |
夫の年収だけが世帯年収になる。 |
支出 | 片働き世帯より実収入が多い。 |
共働き世帯より実収入が少ないが、保育料などの支出も少ない。 |
税金 | 世帯年収が同じ場合、単独で稼ぐよりも夫婦それぞれが稼ぐ方が、同じ世帯年収でも税金を抑えることができる。 |
配偶者控除の対象者となれば、夫の給与から38万円の控除を引くことができ、夫の所得税が安くなる。ただし、夫の収入が1220万円以下の場合。 |
年金 | 妻の年収が130万円を超えると夫の扶養からはずれるため、妻が社会保険を払うことになる。ただし、扶養をはずれて厚生年金などに加入し年金保険料を支払うため、老後に年金として戻ってくる。 | 国民年金第3号者のため保険料を払っていなくても、基礎年金部分をもらうことができる。 |
出産 給付金 |
共働きの妻が出産で休業すると、「出産手当金」「出産育児一時金」「育児休業給付金」の3つを受給できる。 | 健康保険から1人につき42万円の「出産育児一時金」が受け取れる。健康保険組合や自治体によってはプラスαが出る場合もある。 |
家事 育児 |
家事・育児に時間を使うことが限られるため、夫や家族の協力、場合によってはアウトソーシングすることで負担を軽減。 |
仕事に割く時間を家事・育児のための使うことができる。また、夫の家事負担が減る。 |
01|収入
男女の賃金格差は年々減少し、女性も収入を得やすい時代になってきました。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、女性の世代別賃金をみてみましょう。
女性の平均年収は上昇し、この金額をもとに仮に23歳から定年まで正社員で働き続けた場合でも、約1憶円になります。
共働き世帯で考えると、夫婦2名の稼ぎでで2億・3億円の生涯賃金を得ることになります。
一方、専業主婦の場合は会社勤めをしていないため収入はありません。夫の収入が世帯年収となるため、収入源は1つ、もしも夫に先立たれた場合は主要な収入源を失うことになってしまいます。
02|支出面
総務省が2017年に実施した家計調査によると、共働き世帯と片働き世帯の実収入と支出の差をみることができます。
※消費支出:食料、住居、光熱、教育等の支出
共働き世帯の実収入は、前年に比べて0.6%の増加となっています。
消費支出は、前年に比べ0.6%の増加。
消費支出に占める割合を夫のみ働いている片働き世帯と比べると、支出は3万169円高く、共働き世帯は収入が多いことに伴って支出も多くなる結果でした。
妻が働いた場合は、交際費、食費、保育料などの支出が増えるようです。
03|税金面
税金面における共働き主婦と専業主婦の違いをみてみましょう。
配偶者控除が改正
専業主婦の税金面でのメリットは、夫の所得税と住民税を計算する際に「配偶者控除」を受けることにあります。
つまり、夫が払うべき税金が安くなります。
2018年1月からは、この「配偶者控除」の制度が改正されました。改正内容としては、満額38万円の配偶者控除を受けることができる妻の収入が、103万円から150万円までに拡大されています。
【参照元:財務省】
【参照元:配偶者控除が変わる!2018年からの改正点を解説|お金のカタチ】
しかし、夫の収入が1220万円を超える場合、妻が専業主婦であっても控除額は0です。
今までは年収に関わらずすべての世帯で配偶者控除が受けられましたが、今回の改正で高年収の家庭は控除枠が縮小されました。
専業主婦またはパートであっても、夫の年収が1220万円以下でないとメリットはなさそうです。
同じ世帯年収でも片働き世帯と共働き世帯で税金に差がある
共働き世帯と片働き世帯が同じ世帯年収であっても、たとえば夫が単独で600万円稼ぐのと、夫婦それぞれで半分を稼ぐ(夫:300万円、妻:300万円)のでは、共働き世帯が税金面で得になります。
それぞれの税金を知るために、国税庁の給与所得控除と所得税率をもとに表にまとめて、計算してみました。
▼2018年分の給与所得控除計算表
給与収入額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 給与収入額×40% (65万未満の場合は65万円) |
180万円~360万円 | 給与収入額×30%+18万円 |
360万円~660万円 | 給与収入額×20%+54万円 |
660万円~1000万円 | 給与収入額×10%+120万円 |
1000万円以上 | 220万円 |
▼所得税率対照表
所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円 | 5% | 0円 |
195万円~330万円 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円 | 23% | 693,000円 |
900万円~1800万円 | 33% | 1.536,000円 |
1800万円~4000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4000万以上 | 45% | 4,796,000円 |
▼片働き世帯年収600万の場合の所得税
年収 | 600万円 |
社会保険料 | 約85万円 |
基礎控除 | 38万円 |
給与所得控除 | 20%+54万円 |
所得税率 | 10% |
控除額 | 9万7500円 |
426万円=600万円-174万円
②所得控除=社会保険料+基礎控除
123万円=保険料85万+基礎控除38万円
123万円
③税額=課税所得×所得税率-控除額
20万5500円=(①-②)×10%-9万7500円
▼共働き世帯年収600万円(夫300万円・妻300万円)の場合の所得税
年収 | 300万円 |
保険料 | 約44万円 |
基礎控除 | 38万円 |
給与所得控除 | 30%+18万円 |
所得税率 | 5% |
192万円=300万円-108万円
②所得控除=社会保険料+基礎控除
82万円=保険料44万+基礎控除38万円
③税額=課税所得×所得税率-控除額
5万5000円=(①-②)×5%
給与所得控除・基礎控除見直し中
▼給与所得控除の見直し
給与所得控除の見直し
(2020年以降)
- 控除額を一律10万円引き下げる。
- 上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、上限額を195万円に引き下げる。
給与収入金額 | 現状 | 改正後 |
162.5万円以下 | 65万円 | 55万円 |
162.5万円~180万円以下 | 給与収入額×40% (65万未満の場合は65万円) |
給与収入額×40%-10万円 |
180万円~360万円 | 給与収入額×30%+18万円 | 給与収入額×30%+8万円 |
360万円~660万円 | 給与収入額×20%+54万円 | 給与収入額×20%+44万円 |
660万円~850万円 | 給与収入額×10%+120万円 | 給与収入額×10%+110万円 |
850万円~1000万円 | 給与収入額×10%+120万円 | 195万円 |
1000万円以上 | 220万円 | 195万円 |
▼基礎控除の見直し
基礎控除の見直し
(2020年以後)
- 控除額を一律10万円引き上げる。
- 合計所得金額2,400万円超2,500万円以下の個人:控除額が逓減
- 合計所得金額2,500万円超の個人:適用なし
見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなります。
合計所得金額 | 現状 | 改正後 |
2400万円以下 | 38万円 | 48万円 |
2400万円~2450万円 | 38万円 | 32万円 |
2450万円~2500万円 | 38万円 | 16万円 |
2500万円以上 | 38万円 | ‐ |
まだ確定している内容ではありませんが、期待したいですね。
最終決定となった場合は、またご紹介いたします。
04|出産給付金
出産・育児における共働き世帯のメリットは、国からの給付金がもらえることにあります。給付金には3つの種類があります。
出産育児一時金:42万円
- 概要:出産・育児をサポートする制度。妻が加入している健康保険から支給。
- 対象:妻か夫が国民健康保険、健康保険、共済組合に加入し、保険料の滞納がない
- ポイント:出産の翌日から2年以内に申請して受け取ることができる。
出産手当金:55万円(年収300万円の場合)
- 概要:産休期間中の生活をサポートする制度。
- 対象:健康保険に加入し、出産後も仕事を続ける女性。
産前42日・産後56日の最大98日間、標準報酬日額の3分の2を支給。
育児休業給付金:150万円(年収300万円の場合)
- 概要:働くママの育休仲の収入をサポートする制度。
産休や育休取得者で子が1歳(最長2歳)になるまで収入の一部を支給。 - 対象:雇用保険に加入し育休開始前2年前に11日以上働いた月が12カ月以上の女性。
ただし、この3つの給付金を受け取ることができるのは共働き主婦だけです。
項目 | 共働き主婦 | 専業主婦 |
出産育児一時金 | 〇 | 〇 |
出産手当金 | 〇 | × |
育児休業給付金 | 〇 | × |
受け取れる金額の合計 | 約250万円 | 約42万円 |
(※)年収300万円(月給25万円)で計算した場合の金額です。
出産一時金はどちらも給付を受けることができますが、共働き世帯主婦はプラス「出産手当金」と「育児休業給付金」も受け取ることができます。
さらに大きいメリットとして、休業中は社会保険料が免除されます。国民年金の保険料免除制度と違ってその期間は「社会保険料を納めたもの」として扱われます。
05|家事・育児
共働き世帯主婦と専業主婦では、家事・育児に費やす時間も内容も変わってきます。
個人によって感じ方は異なりますが、一般的な違いをお伝えします。
共働き主婦の場合
共働き主婦の家事・育児のメリット・デメリット
- 経済的・金銭的なメリット
夫以外の収入源が増え、お金に余裕があるため、こどもや家族にお金をかけることができる - 時間的なデメリット
時間の余裕がなく、こどもと一緒に過ごしたり、常に成長を見届けることが限られる
専業主婦の場合
共働き主婦の家事・育児のメリット・デメリット
- 精神的・時間的メリット
時間に余裕がある ・こどもと一緒に過ごし、こどもの成長を見届けることができる
保育園からの急なお迎えコールでも対応ができる - 経済的・金銭的デメリット
自由に使えるお金が減るため、こどもにかけるお金にも限界がある
専業主婦は時間的な余裕があるため、家事・育児に費やす時間が増えるため、こどもの成長を常に見守ることができます。
最後に
いかがでしたでしょうか。
共働き主婦と専業主婦の「生涯年収」「収入」「支出」「年金」「出産給付金」「家事・育児」のメリットと違いについてご紹介しました。
共働き主婦の場合は、仕事をしながら、家事・育児をするのは苦労もありますが、夫に協力してもらいながら、働くことで社会との関わりをもち、こども成長も見届けることができます。
税金や保険料を多く払うことになりますが、収入源が2つになりますし、老後の年金も専業主婦より多いです。
一方、専業主婦の場合は、家事や育児に専念ができ、社会に出た際のストレスを抱えなくてよくなります。
税制上の優遇はありますが、夫が働けなくなった場合は収入源がなくなってしまうリスクがあり、老後の年金受給も少ないです。
結婚・出産・育児を機に「共働き主婦になるのか」または「専業主婦になるのか」を考える女性は多いですが、今回ご紹介した情報も踏まえて考えておくと、のちのち「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができると思います。